エクスペリエンス・マーケティングで発想を転換 『「モノ」を売るな!「体験」を売れ!』
【今回のテーマ】
マーケティング
【今回の一冊】
◆タイトル:『「モノ」を売るな!「体験」を売れ!』
◆著者:藤村 正宏
◆出版社:オーエス出版社
◆ページ数:247ページ
◆2001.8.15
【こんな方にオススメ】(5段階)
●従来型の営業を続けてきて業績不振の店舗業 ☆☆☆☆☆
●これからお店をはじめようとしている人 ☆☆☆☆
【レビュー】
●観覧車は何を売っているのか?
・『モノ』ではなく、『事』が大事
・『ライフ』ではなく、『ライフスタイル』を売りましょう
『エクスペリエンス・マーケティング』というのも基本的には上記2点と同じ
Experience(エクスペリエンス):経験・体験・見聞・経験内容を売りましょう
「モノ」を売っていると「安売り競争」になる
観覧車の利用者の8割はカップル。観覧車は「体験」を売っている
きれいな夜景を見ながら、好きな人とふたりっきりで夢のような時間を過ごせる
「今晩こそはキスをするぞ」「今日こそモノにするぞ」とかさまざまな「ドラマ」や「思惑」がある
それを体験するために観覧車が利用されている。遊園地にあったような子どもたちの遊具ではなくなっている。
消費者の実に85%が「欲しいモノはない」と回答しているが、お金を使いたがっている。でもお金を使うべき先がない。お金を使うべき先に気づいていない。
・飲食店に行けば、簡単なメニューの説明と価格だけのメニュー表。
・和菓子屋さんに行けば、商品と価格の表示のみ。
こういったお店の経営者に話を伺うと、「昔のようにだんだん売れなくなってきた」と言われています。
・先日新しい飲食店に行きました。初来店者にはお店をガイドしてくれ、ウリを説明してくれました。おすすめメニューの提案があり、目の前で仕上げの調理をしてくれました。
・お気に入りの回転寿司屋さんは、生簀があり、注文してから調理してくれるので、エビの尾がまだ動いている新鮮さです。
これらのお店は、ただたんに料理を提供するという発想ではなく、お客様に新しい体験をしていただくという発想を感じます。
本書では、モノを売るという発想から、体験を売るという発想をエクスペリエンス・マーケティングと名付け、提案しています。
2001年に出版された本でもう新しいとは言えませんが、モノを売っているお店はまだまだたくさんあります。
事例には飲食店、小売店が多く、店舗業で行き詰まっている方に新たなヒントを提供してくれます。
販促ツールについて、実際の画像がビフォー・アフターで添付されているのも嬉しいですね。
(1)100円ショップは何を売っているのか?
100円ショップは「100円のモノ」を売っているのではなく、「体験」を売っているからたくさんの人が来店する。
消費者の86.5%は「店頭で買う商品を決めている」
100円ショップは「値段を気にしないで買い物ができる。」
「こんなモノが100円で売っている!」という驚きがある。
「商品の使いみちを消費者が自由に決定できるフレキシブルさ。」
「店それ自体がいろいろな体験を提供している場所」であり、消費者それぞれが「自分流の体験」を好きなだけ選択できるシステム。
100円ショップのお客さんは「すでに入店した瞬間から、何かよい商品があったら買おうと密かに決めている」
気がつけば、ショッピングセンターや大型スーパーには大抵100円ショップが入っていますね。
うちの妻も100円ショップ大好きで、上記の話をしたら同意してくれました。
「確かに入店する前から、ええのがあったら買おうと決めてる。」
私も部屋の困りごとや、息子のおもちゃで何か良いものはないかと100円ショップによく行きます。
非常によく考えられた業態ですね。
(2)たった一言加えただけで年間売上アップ
横浜みなとみらいのとあるショッピングモール
モールの中には、何件かの飲食店がある
この店、売上が芳しくない
他店を引き離す、強力な秘策がほしい
初めて来たお客様にとってはどれも似たり寄ったりに見える
こういった場所で前もって何を食べようと決めて来る人は非常に少ない
食べることと同様、その店でどんな体験が味わえるかを思いめぐらし、探している
この店は内装も料理メニューも価格を下げることもしなかった
「夜景無料!当店はこの施設の中で、夜景が一番きれいに見える店です。」
と、書き、証拠に窓から夜景が見えている店内写真をデジカメで撮影し、プリンターで印刷して貼った
夜景という体験を押し出したことで入店率が33.8%向上し、月1000万円売上UP。年間1億2千万円の売上アップ
ある焼肉店は、ネット上に充実している個室の写真を掲載することで宴会等の予約が増えました。
今までそのような情報がネットになかっただけのことです。
個室のイメージが事前に分かれば、幹事さんは当日の様子がイメージできるようになります。
気の利いたお店は個室を指定して予約できるようになっていますね。
「体験」という切り口で考える時、外部の視点で見た方が、お店の人が気づいていない魅力を発見できることが多いです。
自分のことを一番わかっていないのは自分ですね。
毎日、同じ環境にいると、感覚が麻痺してきます。
この事例は非常に安上がりで、とても効果的な打ち出し方ですね。
気づいていない魅力が隠れていないか、もう一度自店を見なおしてみましょう。
(3)チラシに商品、載せるべからず!
横浜ディスプレイ・ミュージアムのクリスマスのチラシ
☓ 単に商品と価格を並べたチラシ → 「モノ」を売ることを主眼
○ 「みなとみらい地区に博物館!あなたはもう行った?」「ミュージアムだけど入場無料」中は全面に博物館内を見渡したかわいいイラストマップ。キャラクターの女の子が館内を探索しながら紹介
→店での「体験」をチラシで先にイメージしてもらう
「勝つチラシ」、それは「体験」を売りにしたチラシ
商品を一切載せないで、自分のお店や会社を紹介する文章を第三者が書いたように作ってみる
新聞やテレビで紹介されて来客が一気に増加するのは新聞やテレビが第三者として紹介するからですね。
商品を一切載せないチラシを作るというのはかなり思い切りが必要です。
新聞の折込チラシでもほとんどそういうものは見かけません。
それは、皆「モノ」を売る発想でチラシが書いているとも解釈できます。
○のチラシは、言葉だけではイメージしにくいでしょうが、売ることよりも、来てもらうことを目的にしています。
チラシの発想を「体験」に切り替えることで、今までにない反響が得られる可能性は十分あります。
●エクスペリエンス・マーケティングを実践するコツ
とにかくすぐにやる。やってみてダメだったら変えればいい
失敗しても、精度が高まればそれは成功
失敗することを恐れないようにしよう
考えている人は100人に10人、その中で行動する人はわずかに1人
たくさん「体験」してエクスペリエンス感性を磨く
筆者は最後にこのようにしめくくっておられます。
『仕事は楽しいかね?』でご紹介した内容とかぶりますが、面白そうなことを遊び感覚でとにかくやってみて、成り行きを見守る。ということですね。
変化は難しいですが、試すのは簡単ですし、人は試すことが大好きです。
あなたのお店・会社はどのような「体験」を提供できるのか?実は既に提供している「体験」がないか?それを打ち出すというアイデアはどうか考えてみましょう!
【目次】
はじめに:ユースケサンタマリアが日本経済をダメにする!?
1 エクスペリエンス・マーケティングって何だ?
2 恐るべし!!エクスペリエンス・マーケティングの威力
3 エクスペリエンス・マーケティングの環境問題
4 エクスペリエンス・マーケティングはゲリラだ!
おわりに: さあ、スタートしよう
【今回の一冊】
◆タイトル:『「モノ」を売るな!「体験」を売れ!』
◆著者:藤村 正宏
◆出版社:オーエス出版社
◆ページ数:247ページ
◆2001.8.15
【おすすめ度】(5段階)
●総合 ☆☆☆☆☆
●読みやすさ ☆☆☆☆
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【編集後記】
「体験」を売るという思考を徹底できているのか。
従来通り「モノ」を売る発想で考えていないか、大いに考えさせられました。
同時に、自分は一体何を売っているんだろう?と考えました。
そこで考えたのが、「変化の種とやる気」を売っているのではないかと考えました。
変化を試みていただくためには、
「これならできそう」
という提案をすることが必要です。
しかし、種を育てるのか、ほったらかしにするのかは経営者である顧客の課題です。
行動につながるかどうかにおいては「やる気」が大切です。
そのためにはお会いしてお話して、元気になってやる気を出していただくことが必要です。
「変化の種とやる気」を提供できるようにもっともっと成長しなければと本書を読んで決意しました。
【目指せ300冊レビュー!】
今回で203目です。
【最新の書籍紹介はこちらで掲載しています】
【過去の書籍紹介はこちらのブログに書いていました】
【おわりに】
最後までお読みくださりありがとうございました。
今後とも引き続き、よろしくお願いいたします。
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