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【書籍紹介】飲食店経営

数字に強くなりたい飲食店経営者へ『ランチは儲からない飲み放題は儲かる』

麺ビジネス
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【今回のテーマ】

飲食店経営の勘所(特に数字)

【今回の一冊】

◆タイトル:『ランチは儲からない飲み放題は儲かる』

◆著者:江間 正和

◆出版社:セオリーブックス 講談社

◆ページ数:252

【こんな方にオススメ】(5段階)

●飲食店の経営数字を理解したい ☆☆☆☆☆

●飲食店で独立開業を考えているが数字は苦手だ ☆☆☆☆

●飲食店の経営を見直したい ☆☆☆☆

【レビュー】

●ランチは儲からない

飲食店の経営相談の依頼を受けた時、できるだけ名乗らず覆面でランチを食べに行きます。

食べログを読んでも、ホームページで見ても、実際に客として体験してみないとわからないことだらけだからです。

さて、そのランチですが、果たして儲かるのでしょうか?

ランチは、原則的に、あまり儲かりません。

例外として、どんぶり屋回転寿司など、最初から回転率を重視していたり、昼も夜もメニューを変えないタイプのお店にとってランチはかきいれどきです。

儲かります。

ランチのいちばん足をひっぱる要因は何なのでしょう?

答えは「人件費」です。

昼ならスタッフ1名あたり、1万2000~1万5000円売上が上がるような、メニュー構成や厨房オペレーションを意識しないと、ランチでも利益が出ているとは言えません。

固定費である家賃や月給で支払っているスタッフの人件費の足しにしているといったレベルで、ランチ部分だけを見れば、けっして商売になっているとは言えません。

ある食堂はランチと物販をしているだけではなかなか利益が得られませんでした。

お得感を重視して原価率を上げており、粗利額が少なく、いつも混雑していてもそれでは不十分でした。

そして、少しずつ夜の営業をはじめられました。

ある焼肉店はお一人できりもりされており、体力の限界を感じ、ランチをやめ、夜だけにされました。

焼肉店は昼より夜の方がどう考えても客単価が高いですね。

本書は飲食店経営を「数字」の簡単で、具体的にわかりやすく語られております。

・「常連さん」は何人必要か?

・「カード払い」は嫌われるのか?

・開業資金はいくら必要なのか?

・「最初の3ヶ月」でその後の結果が変わる

などなど、興味深いテーマが盛りだくさんです。

・飲食店経営を見直したい方、

・飲食店経営をこれからお考えの方、

・飲食店経営を支援する方、

におすすめの一冊です。

(1)「理想の店」は趣味で

私も自然の中でスローライフを楽しみながら、ゆったりとカフェでも経営してと時々思います。

安くて長居できる。そんなお店は可能なのでしょうか?

開業希望者の中には、「理想のお店を作りたい!」と、

「安くて」「居心地よくて=できれば長居できて」

と売上構成要素のすべてにおいて相反することを掲げる人もいます。

「回転率」を求めないなら「客単価」を上げなくてはなりません。

「客単価」を求めないなら「回転率」を上げなくてはなりません。

ビジネスと考えるなら「効率性」を考えなくてはなりません。

趣味なら「非効率性」が含まれてきます。

世の中には「原則潰れないお店」ってあります。

それは、「自分の家の1階や離れで、家族だけでやっているお店」です。

家賃も人件費もかからなければ、残りは変動費だけです。

※変動費・・・売上に比例してかかる経費。食材の仕入代金、おしぼり・お箸などの消耗品など。

定年退職後の「第二の人生」を考えている方、自宅の1階を店舗にして喫茶店や飲み屋さんをやってみませんか?

自宅を使っての開業は、タイミングを間違えなければ、僕は賛成派です。

繁華街や学生街でとても立地は良いように思えるのにコロコロお店が変わるところがあります。

これは高い家賃と開業時の借入を払えるほど売上・粗利が確保できないためではないかと考えます。

数値計画は創業前に厳しめに計画を立てて考えることが重要です。

店舗の内装を整備していたら資金が底をつき、開業前に撤退したというような笑えない話も実際にあります。

最近、田舎暮らしで観光客やドライブ・ツーリング客が来るということで、週末だけ営業するお店もよくあります。

田舎では飲食業だけで十分な利益を考えずに農業・飲食業・地元物産のネット販売のように複数事業を組み合わせて生活に必要な利益を確保するという発想もあるかと思います。

<一般的な飲食店の利益構成(%)>

売上  100
仕入   30 (食材)※40~50%のケースもビジネスモデルで大きく異なる
粗利   70

人件費    30 (経営者の報酬含む)
家賃   10
経費   10
借入返済 10

利益   10

<もし家賃も人件費も不要な飲食店だったら?(%)>

売上   43
仕入   13 (食材)※40~50%のケースもビジネスモデルで大きく異なる
粗利   30

人件費     0 (経営者の報酬含む)
家賃    0
経費   10
減価償却費10 (さすがに最初の設備投資は必要。その費用を年あたりで計上できるもの)

利益   10

もし、自分の生活費は年金があるから材料費等でトントンでいいとすれば、一般的な飲食店を100とすれば43で採算が取れる概算になります。

(2)独立したい人への質問

職人気質が強い方ほど、

「数値は苦手で」

と言われる方が多いように思います。

また、儲けることにあまりいいイメージをお持ちでない方もいらっしゃいます。

しかし、自分だけ生活できればいいのか、家族を養い子どもの学費も稼ぐ必要があるのかという観点から必要最低限の収益確保は必須です。

当然、繁盛している自分のお店の理想イメージもあることでしょう。

下記の質問に応えることで、その理想イメージで営業が成り立つかが見えてきます。

「いま働いているお店に来ているお客さんは、いくらくらい払っている人が多いですか?」

 →平均客単価

「いま働いているお店に来ているお客さんは、何時間くらいお店にいますか?」

 →平均滞在時間 →1時間当たりの金額

「いま働いているお店に来ているお客さんは、どれくらいの頻度で来ていますか?」

 →「常連さん」をどれくらい作ることが目標か

「いま働いているお店の広さ(席数)はどれくらいですか?」

 →席数

「いま働いているお店は儲かっていますか?」
「あなたは、今のお店と同じようなお店をやりたいですか?」

→「理想」「希望」を落とし込みながら
 本当にやっていけそうかの「現実」「可能性」を探る

今、働いているお店で修行されているなら、このような質問から数値をイメージできるようになっておくといいですね。

また、客として外食するときも上記のような観点で数値のシミュレーションをしましょう。

(3)2時間飲み放題はお店がトクをする

飲み放題とコース料理、幹事さんには数値が読めて嬉しい提案です。

では飲み放題について、飲食店側はどう考えているのでしょうか?

飲み放題の平均値は4~5杯/人に落ち着きます。

アルコール・ソフトドリンク全部込みで「3~6杯」です。

2時間で7杯以上飲むということは、飲むことに集中しない限り時間的に無理です。

飲み放題は、「コース料理に付随」し、「たいがい90分」であることが多いです。

「ドリンクでの利益の薄さ」を「フードでの利益を厚め」に調整して、全体のバランスをとっているお店が多いのです。

2時間きっかりで退店として、2回転目をとりにいきます。

ドリンクとフードを組み合わせて粗利額を確保する発想なんですね。

私のようなアルコールを飲まない人向けの提案もあると嬉しいです。

また、飲み放題+コースメニューを設定することで、団体予約がとりやすくなります。

一度飲み会の幹事を経験すればわかると思いますが、大抵の場合、予算は最初に決まっています。

飲み放題・コースメニューがない単品オーダーだけのお店ば最終的にいくらかかるかわかりません。

こういうお店は最初から飲み会候補から外されてしまいます。

2~5人程度の仲間内だけの飲み会であれば予算を決めずに席だけ予約もありえます。

団体予約を取る店なのか、個人客限定とするのか、店舗としての基本方針をしっかりと考えておく必要があります。

最近は「プラス500円で1時間延長」といった時間の長さをウリにする提案もありますね。

これをするかどうかは、夜は何回転を理想とするのかをよく考える必要があります。

●「お一人様」のお客さん大歓迎!

一見さんの新規客と、毎日少額だけど、しょっちゅう来てくれる常連さん、あなたはどちらを大切にしますか?

また、飲食店を応援する立場の人にとっても、お一人様の価値を知っておくことはとても大切です。

・1000円のカウンター限定お任せ料理

・最初の一杯500円、おかわり一杯500円

で、合計2000円のお客さんが月25日で5万円/月

1年で考えると60万円です。

材料費30%を除いて42万円です。

たった一人のお客さんが毎日誰かしら一人でも来てくれる場合と、来てくれない場合では年に粗利で42万円違ってきます。

お店にとってはとってもありがたいボディーブロー効果です。

お金が絡むゆえに、本音での「感謝」の気持ちが起こります。

まさに生かされているわけですから。

自分のお店はいわば、自分の家のようなもの。

そこへ「よっ!」って訪ねてきてもらえるのはうれしいものです。

知り合いのお店、お気に入りのお店、

1人でもどんどん行ってあげてください。

本気で喜んでくれますし、それが、お店をやっている人の続けていく勇気にもなるのです。

逆にいうと、こういった超常連客からすれば、新規客への安易な割引クーポンは喜ばれません。

いつも定価で支払っているのに、クーポンを持った一見さんが20%OFFだったら超常連客はどう思うでしょうか。

「あいつが20%OFFなら、オレは30%OFFやな。」

といった心理になり、場合によっては大事な超常連客がお店から離れていってしまうリスクにもつながります。

割引でお店を選ぶ顧客は最もリピーターになりにくい顧客です。

あるフレンチレストランのオーナーは、

「クーポンで集客しても後に続かない。」

と言われていました。

なぜなら、次回も同じように割引条件のより良い新たなお店を探すからです。

安易な値引き・クーポンによる集客を避け、お店の屋台骨を支える超常連客に一番還元するような仕組みを考えましょう。

 

非常に中身の濃い本でした。

他にも、

・スタッフの人件費、求人で出す金額
・ランチで満席は当たり前
・フランチャイズについて
・広告の費用対効果
・家賃の値上げに対抗するには
・税務調査
・飲食店に営業したいなら

と、勉強になることがたくさんあります。

丼勘定では厳しい世界、数字もきちんと認識した上で、コンセプトを考え、経営していきましょう。

 

【目次】

はじめに

第1章 「どんぶり勘定」ではおいしくない

第2章 「理想のお店」なら趣味でやれ

第3章 「気がついたお店」だけが生き残る

第4章 「スキ」を見せればご破算の世界

第5章 ウーロン茶は「高級ワイン」より高い

あとがき 

【今回の一冊】

◆タイトル:『ランチは儲からない飲み放題は儲かる』

◆著者:江間 正和

◆出版社:セオリーブックス 講談社

◆ページ数:252

 

 

【おすすめ度】(5段階) 

●総合 ☆☆☆☆☆

●読みやすさ ☆☆☆☆

【関連リンク】

【まとめ】儲かる飲食店になるためのおすすめ本12選

■飲食店開業前の心構え

■創業計画を立てる上での順序例

■社員満足経営こそ顧客満足・感動の礎

■飲食店の経営戦略

■コンセプトからメニュー作り

■サービス力を高める

■販売促進・集客

■ホームページ・Facebook・Twitter等のネット活用

■飲食店の数値計画を考える

■創業計画書を作成する

■業態別飲食店経営を学ぶ

■飲食店経営を物語で学ぶ

■小さなお店のブランディングを考える

■経営者自身を磨き続ける

 

 

【他の方のレビューを見る】

飲食店の経費費率・必要な常連数

「2時間飲み放題」はお店がトクをする!

「現在の売り上げ」=「スタッフの実力」

 

【編集後記】

最近、飲食店経営に関する相談が増えてきております。

学生時代、キッチンでアルバイトをしていたのですが、
当然ですが、ずいぶん見る視点が進化しました。

今後も多くの人の考え、経験を吸収して、
少しでもお役に立てるようにしていきたいです。

 

【目指せ200冊レビュー!】

今回で118冊目です。

 

【おわりに】

最後までお読みくださりありがとうございました。
今後とも引き続き、当ブログをよろしくお願いいたします。    

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