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【書籍紹介】サービス業

良い売上と悪い売上とは? 『潰れかけたホテル・旅館を半年で再生する方法』

社員を大切にする経営

【こんな方にオススメ】(5段階)
●業績不振の旅館・ホテル経営者 ☆☆☆☆☆
●旅館・ホテルの経営支援者 ☆☆☆☆

【感謝】
読者のみなさまへ
いつもありがとうございます。
道路の気温でマイナスを見かけるようになってきました。
一方で、日本海側は蟹のシーズンがはじまりました。冬は魚も脂がのっておいしいですね。

【今回のテーマ】
ホテル・旅館の再生

【今回の一冊】
◆タイトル:『潰れかけたホテル・旅館を半年で再生する方法』
◆著者:ホテル再建コンサルタント 中山永次郎
◆出版社:幻冬舎
◆ページ数:201

 

【レビュー】

●「良い売上」と「悪い売上」

「良い売上」とは、売上に比例する形で利益も伸びていくタイプのものです。宿泊客が増えれば増えるほど黒字となるわけであり、要するに普通の売上のことを指します。
一方、「悪い売上」とは、売上に比例する形で、利益ではなく、損失が増えてしまうタイプのものです。
つまり、今述べた「良い売上」とは逆に、宿泊客が増えれば増えるほど、ホテル・旅館は赤字になって
しまうわけです。
ホテル・旅館が宿泊客を確保するうえで、現在最も大きなルートとなっているのは、自社ホームページとネットエージェントですが、リアルエージェントと呼ばれている旅行会社も、一時の圧倒的な送客力はないものの、地方のホテル・旅館にとってはまだまだ欠かせない大きな存在です。
リアルエージェントの中でも、ツアーなどを扱うエージェントによって、現在、窮境にあるホテル・旅館は、過酷なまでに”買いたたかれている”状況となっています。
激安の低価格ツアーを請け負うことになるのです。

本書は経営破たんした企業、あるいは経営破たんしかけている企業を再生するために登用された経営者であるターンアラウンドマネージャーとして、日本全国のホテル・旅館を驚くべき短期間で再生させた実績を持つ筆者がそのノウハウをまとめたものです。
不振の旅館・ホテルの共通点を明らかにし、改善すべき点を6つの処方箋として具体的に説明されています。
ホテル・旅館業経営に関わる方には参考になる点が多々あると思います。

(1)人件費・間接費よりも売上原価・直接費を見直す

再生に失敗するホテルはBS(貸借対照表)の再生にばかり目がいきます。しかし、まず行わなければならないのは、何よりもPL(損益計算書)の再生なのです。
窮境に陥ったホテル・旅館のオーナーあるいはコンサルタントが、経営を建て直そうとして、通常、真っ先に取りかかるのが、人件費と間接費の削減なのです。
しかし、残念ながら、このように人件費、間接費の削減にばかり熱心なホテル・旅館で、再生に成功するところはほとんどありません。
売上原価と直接費の削減こそが、人件費と間接費の削減よりもより重要なのです。
売上原価と直接費は、売上の増減によって変わるものであり、ビジネスの本質に大きくかかわるものといえます。
言い換えれば、ビジネスモデルを変えない限り下がるものではありません。

 

(2)食泊分離ができていなければ原価管理は不可能

食材の原価率を管理するためには、管理会計上だけでも、「食泊分離」、すなわち、宿泊代と料理代をそれぞれ別個に把握していなければならないはずです。
冬場の閑散期は、宿泊料金は安くなりますし、逆に行楽シーズンやお正月などの繁忙期には
宿泊料金は高くなります。
宿泊料金を値上げしたのか料理料金を値上げしたのか、宿泊料金を値下げしたのか料理料金を値下げしたのかわからないと、個別原価管理など到底できません。
どこまでの金額を宿泊代とし、どこまでの金額を料理台とするのかを、細かく査定して判断することは難しいかもしれません。
そのような場合には、初年度の一応の目安として、宿泊料金と料理料金それぞれを等分にしておくことをお薦めします。

(3)旅館はもっと飲料をもっと売らなければならない

飲料を積極的に販売している旅館は極めて少ないのが実情です。
窮境にあるホテル・旅館ほど、むしろ原価率の高いお土産を売ることに精を出している有様です。
「1泊2食○○円」などと事前に宿泊売上と料理売上がフィックスされた旅館では、収益を伸ばす余地は、飲料売上と売店売り上げしかありません。
飲料の原価率は、シティホテルでは20%以下が当たり前ですが、旅館の料理原価率はかなり高めで、中には35%以上の旅館もめずらしくありません。
明らかに、飲料を売るノウハウ、原価率を下げるノウハウが不足しているのです。

●再生までのマイルストーンを設ける

予算達成のためにどういう目標管理制度をしくのか、ここがターンアラウンドマネージャーの腕の見せどころです。
年度予算や月次予算をふまえて、営業部門に限らず、サービス部門、調理部門、予約部門、フロント部門などすべての部門に、定量的な数値目標を設定して可能な限りグループ別、個人別などに、ブレイクダウンする必要があります。

サービス部門 ・・・飲料売上+サービスの定量化
調理部門   ・・・料理原価率と月次棚卸額
ネット予約部門・・・客室稼働率×平均客室単価
フロント部門 ・・・夕食開始時間の分散率

人間には、目標に向かって頑張れる時間の限界があります。
そして人間が頑張るためには、達成感が必要です。

筆者は本書前半で、コンサルタントに頼っても再生できないと言われています。
分厚い再生計画資料ができても、内容は一般的な経営理論やあるべき論であったり総花的であったり、
理論のフレームワークの中で思考が停止してしまい、分析そのものが目的化していることが多いとのことです。
現状分析(診察)が前工程で、再生実行支援(治療)が後工程としているコンサルティング会社が多い中、診察は治療を前提にし、診察をしながら治療をする文字通りの診療でなければならないとする筆者の考えには耳が痛い部分が多々あるのですが、大きく共感しました。
今までの考えや、人間関係にとらわれず発想できる外部の視点はとても大事ですが、やはり具体的な処方箋まで提示できなければ意味がないですね。
実践的な具体策が多く提示されている良書だと感じました。

【目次】
はじめに
第一章 斜陽化するホテル・旅館業界
第二章 潰れるホテル・旅館には必ず共通点がある
第三章 たった半年で再生可能な6つの処方箋
第四章 再生は決してイバラの道ではない
おわりに

【今回の一冊】
◆タイトル:『潰れかけたホテル・旅館を半年で再生する方法』
◆著者:ホテル再建コンサルタント 中山永次郎
◆出版社:幻冬舎
◆ページ数:201

 

【おすすめ度】(5段階)
●総合 ☆☆☆☆
●読みやすさ ☆☆☆☆
【関連リンク】
中山永次郎さんのFacebook

【編集後記】
何度か事業再生計画のお手伝いもさせていただいているんですが、計画づくりがメインで物足りなさをずっと感じてきました。
そんな中で、今は具体的に業績を向上させるアクションをその会社に応じてじっくり考え、収益力の強化を実現すべく試行錯誤している毎日です。

【目指せ200冊レビュー!】
今回で142冊目です。

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