【こんな方にオススメ】(5段階)
●社員のやる気を高め、顧客に感動を提供する会社を本気で作りたい ☆☆☆☆☆
●社風・社内の人間関係を良くしたい ☆☆☆☆
●成熟した業界での差別化戦略のヒントを得たい ☆☆☆

 

【今回のテーマ】
社員のやる気とお客様主義

 

【今回の一冊】
◆タイトル:『山奥の小さなタクシー会社が届ける幸せのサービス』
◆著者:中央タクシー株式会社 代表取締役会長 宇都宮 恒久
◆出版社:日本能率協会マネジメントセンター
◆ページ数:213
◆2012.11.30 初版

 

【レビュー】

●理想の会社は一日にして成らず

中央タクシーが理想の会社になるまでには実に二十年という長い年月が必要だったのです。
毎日毎日、みんなで理念を唱え続け、二十年かかったのです。
お客様主義の実現をすぐに可能にするようなテクニックもなければマニュアルもありません。
ただただ愚直に理念を唱え、それを現場で実行する。
その繰り返しです。
しかしそうやっていったん根付いたお客様主義は会社と一体となっていますから、そう簡単には
揺らぎません。

本書は長野県にて、「理想のタクシー会社」を作ると決意し、業界の常識と戦いながら徹底した
「お客様が先、利益は後」
を貫き、中央タクシーを市民に愛される県下売上No.1のタクシー会社に育て上げた筆者によるものです。
その筆者が四十年近い経営者としての経験から「真のお客様主義」とは何か、それを実現するために何をしてきたのかが紹介されています。
幸せのサービスが伝わってくるエピソードも各章冒頭で紹介されており、読んでいると心があたたかくなります。
技術やテクニックではない真のお客様主義が描かれています。

 

(1)経営理念を絵空事にしないために

経営理念の本当の意味がどれだけ社員の間に浸透し、実践されているでしょうか。理念は組織で共有するだけでなく、現場で確実に実行されなければ意味がないのです。
「お客様が先、利益は後」
と言ったところで、経営者が少しでも利益優先の態度をとれば、乗務員さんは建前と本音を瞬時に見抜くでしょう。
「お客様が先なのだ」
「利益は後でいいのだ」
「利益はそのときいただかなくてもいいのだ」
そう覚悟してやり抜く気持ちの強さが必要です。
地方のタクシー会社は97%が赤字だと言われています。
そのなかで中央タクシーはきちんと利益を出しています。
長野市のタクシー1台の月の売上の平均は40万円です。これに対して中央タクシーは110万円を超えています。
これこそ「お客様が先 利益は後」が、私たち一社の理念を超えた真実であることを証明しているのではないでしょうか。

(2)運輸業ではなくサービス業

私たちの仕事は「人を運ぶ仕事なのだ」と枠を決めてしまうと、それさえやっていればいいんだという気持ちがどうしても強くなってしまいます。
だから、お客様が行き先を告げても、黙ったままハンドルを握る運転手さんがいるのでしょう。
運んでやったからいいだろう。そういう態度です。
中央タクシーは、創業時から、
「私たちの仕事は運輸業ではなく、サービス業だ。」
と定義しました。人が運ぶのが仕事ではなく、お客様に質の高いサービスを提供するのが仕事であると再定義することによって、中央タクシーは他社が考えないサービスを様々に編み出し、実行してきました。
その一つがお迎えの仕方です。
呼ばれてお客様のところに着いたらいったん車から降りて、お客様を迎えに上がるサービスを行っています。
昔から車を降りることもせずに「プッ、プー」とクラクションを鳴らすなんてことが普通に行われていました。
こういった行為は、自分たちは人を運ぶ仕事をしているのだという意識から出てきます。
でも、お客様の気持ちはどうでしょうか。
クラクションにせかされ、慌てて靴を履いて外に出る。果たしてそれで、いい気分になる人がいるでしょうか。
私たちはタクシー業をサービス業と考えますから、クラクションでお客様をせかすことはしないのです。

(3)タクシー未経験者を採用

なかなかサービス向上を果たせなかった中央タクシーが、大きく変わっていったのは未経験者の採用を開始してからでした。
創業から経験者を採用し、3・4年やってみましたが、なかなか旧態依然としたタクシー会社から抜け出せません。
濁った水はいつまでたっても濁ったままです。
でも濁った水に真水を少しずつ注いでいったらどうだろうか。
だんだん濁りが薄くなり、最後は透明になるのではないか。
やはり未経験者だけを採用するしかない。
そう思うようになりました。
思い切って募集広告に
「タクシー乗務経験者はお断りしております」
と記しました。もちろん業界の非常識です。
あり得ないことです。
未経験者の入社を境に乗務員さんの気質ががらりと代わりました。
未経験者はお客様への挨拶やドアサービスにあまり抵抗がないのです。
前職で飲食業などのサービス業をしていた人などは、むしろ挨拶するのが当たり前です。
未経験者が増えると同時にサービスの質がぐっと上がっていきます。
お客様が喜ぶサービスを自分たちで考え、自分たちで実行できるようになったのです。

●事業承継で時代の変化に合わせる

今、私は中央タクシーの経営を息子にゆだねています。
ずいぶん前から六十歳になったら社長を退こうと考えていました。
実際に退任したのは六十一歳のときです。
社長から会長に退き、中央タクシーの本社を訪ねるのは一ヶ月に一回か二回です。
本社に行ってもあれこれ言いません。
相談を受ければ答えますが、命令も指示もしません。
時代はどんどん変わります。
会社も時代に合わせて変化しなければいけません。
手っとり早く会社が変わるには、
社長が交代するのが一番です。
新しい社長になれば一気に変化が起きます。
経営者の最大にして最後の仕事。
それが経営の権限委譲だと言われています。
「お客様主義」
「お客様が先 利益は後」
これらの理念、そして、お客様に幸せを運ぶタクシー会社であり続けること、その根っこさえ変わらなければ、あとは時代の波に合わせていかようにも手段を選んでいけばいいと信じています。

採用、人財教育、社員のやる気向上、事業承継、他社との差別化、数値管理のあり方と中小企業経営のヒントになることが満載です。
業界の常識に挑戦し、会社をとりまく全ての人々が幸せになる。そんな会社を創造したい
方におすすめです。
感動のエピソード、具体的事例も見逃せません。

 

【目次】
はじめに
序章 一台のタクシーから生まれる伝説
第1章 本当のお客様主義とは?
第2章 理想の会社ができるまで
第3章 理想を貫くために常識と戦う
第4章 お客様主義を浸透させる
第5章 社員のやる気を掘り起こす
第6章 経営者として学んだ仕事

 

【今回の一冊】
◆タイトル:『山奥の小さなタクシー会社が届ける幸せのサービス』
◆著者:中央タクシー株式会社 代表取締役会長 宇都宮 恒久
◆出版社:日本能率協会マネジメントセンター
◆ページ数:213
◆2012.11.30 初版

【おすすめ度】(5段階)
●総合 ☆☆☆☆☆
●読みやすさ ☆☆☆☆☆

 

【関連書籍のレビュー】
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『日本でいちばん大切にしたい会社3』
→中央タクシーさんも紹介されております。

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(1)まごころはがき
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【関連リンク】
中央タクシー株式会社

 

【編集後記】
すばらしい良書はあっという間に読み終わってしまいます。
本書からもたくさん勉強させていただきました。
社員も顧客も取引先も幸せな会社として中央タクシーさんの話も広めていきたいなと思います。

【目指せ200冊レビュー!】
今回で160冊目です。

丹波経営研究会