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【書籍紹介】経営

本業以外に手を出すな!世界のHONDAの礎を作った男『経営に終わりはない』by藤沢武夫

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中小企業経営に役立つビジネス書・自己啓発書レビュー
『経営に終わりはない』
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たいまつは自分の手で
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【感謝】
読者のみなさまへ
いつもありがとうございます。
まだまだ残暑が厳しい日々が続きます。
我が家は昼間の熱がこもるようで夜は外より中の方がはるかに暑いです。
あまりエアコンは使わないのですが、さすがに34℃となると考えますね。

※初稿2011.9.12

※更新2020.6.5

【今回のテーマ】
人物

【今回の一冊】
◆タイトル:経営に終わりはない
◆著者:藤沢 武夫
◆出版社:文春文庫
◆ページ数:235

【こんな方にオススメ】(5段階)
●本田技研工業の創業期の経営を学びたい ☆☆☆☆☆
●藤沢武夫の経営を学びたい ☆☆☆☆☆
●藤沢武夫から見た本田宗一郎を知りたい ☆☆☆☆

【レビュー】

●自分の持っている才能の限界を知りたい

私は戦前から、だれかをとっつかまえて、いっしょに組んで自分の思い通りの人生をやってみたいと思っていました。
私よりももっと金を持っている人に会ったら、きっと本田の夢は叶えられたかといえば、そうではないと思います。
金を持っている人は、その金をもっとふやしたいとか、権力を得たいとか、そういう欲があるでしょうが、私はなにしろ
仕事がしたかった。

自分の持っている才能の限界を知りたいということが、私の夢だった。
「金のことは任せる。交通手段というものは、形はどう変わろうと、永久になくならないものだ。けれども、何を創り出すかということについては一切掣肘を受けたくない。おれは技術屋なんだから」
by 本田宗一郎

本田技研工業が好きな方でしたら、藤沢武夫氏のことはご存じだと思います。
「技術の本田宗一郎氏(社長)、経営の藤沢武夫氏(副社長)」
この2人の運命的な出会いから世界のHONDAははじまります。
町工場から大企業へ、個人経営から組織経営へ変わっていく本田技研工業、節目節目における藤沢氏のとった戦略・戦術、その背景にある考えが書かれています。
町工場からいかに夢を実現していくか、大きな志を持つ製造業経営者には大変良い事例ではないでしょうか。

(1)本業以外に手を出すな

生産企業は生産企業なんですから、為替差益なんかで金儲けをしちゃいけない。
だから、私は本業以外のもので金儲けをしてはいけないという原則を、本田技研でつくってしまったのです。
ある特定の人が為替をいじって、5千万とか1億円儲けたとします。

すると、営々と働いて3千万円の利益しかあげられない多くの人たちは、為替の大儲けに決していい感じは持たないだろうと、私は思います。
物をつくる会社に働いている物をつくる人たちは、自分たちの働きが、あるひとつの知恵による稼ぎよりも劣ったものでしかないと思ったときに、寂しさを感じて、情熱を失ってしまうだろうと思う。
なんといっても金には魅力、というより魔力があります。
しかし、金儲けをする能力ならば、本田宗一郎より私のほうが上です。しかも、私はやろうと思えばできないことはない地位にいた。
しかし、どんな場合にも本業以外で儲けることはやりませんでした。
会社の連中が努力しながらも、バタバタしないでいられるのは、これ以外に自分たちが金儲けする方法はないんだから、自分たちの力でやるんだということを、うちの会社の連中がみんな知っているからです。

(2)社長には欠点が必要

社長には、むしろ欠点が必要なのです。
欠点があるから魅力がある。つきあっていて、自分のほうが勝ちだと思ったとき、相手に親近感を持つ。理詰めのものではだめなんですね。
私のほうが欠点は少ないでしょう。
だが、そのぶん魅力がない。だから、社長業は落第です。
私は若いときから、自分の精一杯の知恵を出してみたいと思っていました。だれかの鞄持ちをして、なんとかその無名の人の持っている才能をフルに生かしてあげたい、というのが夢だったんです。
本田技研の社長は技術系の人が受け継いでいくべきだ、と私は思っています。たとえば経理出身とか銀行出身の人が社長になっても、技術というものを理解できない。
「そんなものは後まわし」
ということになってはたいへんです。

(3)仕事の履歴書「私の記録」

ふつうの場合、日記は人に見せないで引出のなかにしまっておくものです。
けれども、職場で書く日記は、「今日はこういうことを考えて、こういう仕事をした」とか、「ちょっとした思いつきをいったら、改善に役立った」という内容で、その人の仕事の履歴書になるわけです。
このノートを現場に置き、だれでも見られるようにしました。もちろん、上役も見ることができる。
すると、班長が部下の功績を自分のものにしてしまっていたのが、だれの仕事かということがはっきりわかるようになったわけです。
そして、ほかの職場に移るときには、その履歴書もいっしょに持って行く。
そうすると、使いものにならないから移されたという在来の形が、功績があったから
移ってきた
ということになります。

自分の過去が認められているのだから、職場を移動することもいやでなくなってくるんです。
この「私の履歴書」は、退職するときは自分で持って帰ることができます。
子や孫が見れば、父や祖父がどういう仕事をしてきたかということが一目でわかる。愛情を持てるし、尊敬する気にもなると思う。

●二十五年目の幸せな別れ

昭和四十八年の正月
「かねてから考えていたとおり、今年の創立記念日には辞めたいと思う。社長はいま社会的な活動をされているし、どうされるかわからないが、私からいわないほうがいいだろうから、専務から私の意向を伝えてもらいたい」(藤沢氏)
本田は私のことを聞くとすぐ、
「二人いっしょだよ、おれもだよ」(本田氏)
といったそうなのです。その後、顔を合わせたときに、
「まあまあだな」
「そう、まあまあさ」
「ここらでいいということにするか」
「そうしましょう」
すると、本田はいいました。
「幸せだったな」(本田氏)
「ほんとうに幸福でした。心からお礼をいいます」(藤沢氏)
「おれも礼を言うよ、良い人生だったな」(本田氏)

レビューでは、一部しかご紹介できませんが、経営をする上で、販売、生産、開発、資金繰り、事業展開と学ぶ点が満載です。
藤沢氏は本田宗一郎氏ほど知られてはいませんが、私にとっては憧れの人物です。

浜松の町工場の時から「我が社は世界的視野に立ち」と、大きな夢を持っていた本田氏が、藤沢氏と組み、東京へ進出し、本田技研工業の礎を仲間達と実現していく物語は、閉塞感がただよう今こそ、注目するに値するストーリーだと思います。
また、本田技研工業は、本田氏、藤沢氏が比較的若いうちにバトンタッチを成功させております。カリスマ創業者から後継者を含む集団経営への移行のお手本にもなります。

【目次と注目ポイント】
一、生命をあずかる仕事
・人間を判断するときは、その人の家庭を見る
・創業者はいわば一種のバクチ打ち
二、思いがけぬ危機
三、本業以外に手を出すな
・国家の軍事力に相当するものが技術力だとすれば、
外交にあたるものは営業力
四、万物流転の法則
・伝票を今までの三分の一に
・技術者たちにお金を教育
五、経営者の心構え
六、模索と学習の日々
・”人間に一番たまらない苦痛は何か”と聞かれれば、
”する仕事のないことだ”と私は答える
・エキスパート制度
・研究所の独立
・役員は大部屋へ
七、たいまつは自分で持て
・金を使おうという提案は、従業員のほうからは
なかなか出しにくい
八、海のむこうへ
・苦労してもパイプは自分でつくらなければならない
九、頭の切り替え
・一つの正しい理論があると、それが政治に優先するのが
アメリカという国
十、本田かぶれ
あとがき
・初代の経営者の役割の一つは、後継者に経営の元本をしっかりと受け渡すということ。彼らが仕事をしやすいように、経営のタテ糸をこわさずに伝えるということは、創業者のつとめ。次代の人が経営しやすいように配慮しなければならない。

【今回の一冊】
◆タイトル:経営に終わりはない
◆著者:藤沢 武夫
◆出版社:文春文庫
◆ページ数:235

【おすすめ度】(5段階)
●総合 ☆☆☆☆☆
●読みやすさ ☆☆☆☆

【編集後記】
学生時代に、卒業論文のテーマの関係で本田宗一郎氏を知りました。
「日本にこんな経営者がいたのか!」
当時の私には衝撃でした。それから本田氏の経営を任された藤沢氏のことを知りました。
このような素晴らしい出会いが自分にも訪れるように、日々研鑽です。

【目指せ100冊レビュー!】
今回で86冊目です。

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