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【書籍紹介】価格戦略

低価格・値下げ地獄脱出法『良い値決め悪い値決め-きちんと儲けるためのプライシング戦略』

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【今回のテーマ】

価格戦略

 

【今回の一冊】

◆タイトル:『良い値決め悪い値決め-きちんと設けるためのプライシング戦略』

◆著者:田中 靖浩

◆出版社:日本経済新聞出版社

◆ページ数:248ページ

◆2015.7.16

 

【こんな方にオススメ】(5段階)

●価格競争・値下げから離脱したい会社 ☆☆☆☆☆

●時間の切り売りで儲からない士業・サービス業 ☆☆☆☆

●プライシングの考え方を学びたい ☆☆☆☆

 

【レビュー】

●デジタルとアナログ、価格が下がりにくいのは?

豪華で品のあるアナログ時計はスイス職人しか作れませんが、
デジタル時計であれば中国の工場で作ることができます。

その昔、アナログな職人的技術を駆使して作ったVHSレコーダーは同性能の製品が半額になるまでに8年を要したそうですが、
デジタル部品の寄せ集めで作るDVDレコーダーは半年で半額になったそうです。

アナログは価格が下がりにくいが、デジタルは価格が下がりやすい。

Digital・・・デジタルデータの世界では、マネやパクリ、コピーが横行します

Online・・・オンラインの世界では、日本中・世界中のライバルと安値競争が起こります

Global・・・グローバルの世界では、仕事が安い国に奪われます。

この3つが複合的にやってくるのがDOG環境です。

すべてのビジネスは大きく2つの分岐点に立たされています。

ひとつはあえてDOGたちを相手に戦うことを選ぶ道。

もうひとつはスケールメリットを求めず、小さく居心地の良い空間をつくりながら「高い価格」を目指す。これがDOGと戦わない値決めです。

Cozy・・・安さよりも、こじんまりした居心地の良さ。

Analog・・・不思議な魅力。なんだか楽しいビジネス

Touch・・・共感と触れ合い。手作り感や思いを含めて伝える。そこにタッチ=共感してくれるファンができれば、値下げしなくても大丈夫。

レッドドッグから離れ、ブルーキャットのいる場所を目指しましょう。

 

「品揃えと低価格は大手の得意技。そこで勝負しないように。」

個別企業の支援やセミナーでよくこうお伝えしています。

また、どのように今の価格設定にしているかの根拠があやふやだったり、

「昔からこんな感じだった。」といわれるケースもよくあります。

『一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト~小予算で簡単にできる感情価格決定法~』

をきっかけに、顧客目線での価格決定を意識するようお伝えできるようになったのですが、

今回はそれをさらに補強してくれる本でした。

日本は高度成長期の「よいものをより安く」という価格についての考え方を今もひきずっており、それが経営を苦しくしているという話はなるほどと思いました。

日本がそうしている間に、ITや金融・サービスといった製造業以外の分野を発展させたアメリカでは、新たな価格設定の考え方が発達しています。

低価格で世界と勝負して勝算がないのであれば、

「良いものを、より高く」

という値決めの哲学をもってビジネスに取り組もうというのが本書の提案です。

少し数値の説明が難しい人もおられるかもしれませんが、わかりやすい具体例をもって説得力のある内容です。

肝を冷やしたのが、個人経営のデザイナー、講師、プログラマーが「無料」に向かって報酬が下落していくと言われていたことです。

私自身、値決めには試行錯誤し続けています。

また、ある税理士の先生が、「決算・確定申告といった仕事は将来なくなる。そのために新たな価値提供をしていかなければ」と言われていたことを思い出しました。

立場の弱い個人経営のサービス業で価格交渉で苦労されている方は多くおられると思います。

本書が値下げの悪循環から脱出するきっかけになるかもしれません。

 

(1)DOGと戦わないための3つのステップ

1.値下げのメンタルブロックを外す

「値下げするしかない」という思い込みを捨てる

「良いものを、より安く」はユニクロとニトリにまかせて、「良いものをより高く」を目指す

あるカフェでピカソを見つけた御婦人から

「私をスケッチしてくださる?」

と頼まれたピカソ、サラサラと肖像画を描き上げました。

「おいくらかしら?」

と尋ねる婦人に対して、ピカソは

「3000フラン」と答えます。

「5000フラン!たった3分描いただけで?」

と驚く御婦人に向かって、

「いいね」

とピカソ。

「私はここまで来るのに、一生を費やしています。」

2.値下げの下限を知るため、値決めの数字を学ぶ

値決め → 1個の儲け → 全体の儲け

のプロセスを学び、儲けのメカニズムを理解する

3.値決めを成功させるマーケティング&心理学を学ぶ

アメリカで発展している単純な値下げや値上げを超えた新たな手法である
値決めのマーケティングと行動経済学(ビジネス心理学)を習得する。

 

(2)値下げ戦略成功の2条件

1.変動費の比率が低いこと(固定費体質であること)

2.値下げによって販売数量が大幅に増加すること

マクドナルドは1個210円のハンバーガーを100円にした時は
18倍という驚異的な売上の増加が成功したが、65円にした時は
儲けの減少以上の販売数量増加に至らなかった。

値下げによる「販売数量の増加」を阻む3つの壁

1.自らのキャパシティの限界

販売数量の増加にともなう生産キャパの限界

2.ライバルの値下げ追随

ライバルが追随すれば、安さの優位は一瞬で消滅する

3.顧客感情

「おっ!安い」と顧客がたくさん買ってくれるか?

値下げやお祭りが盛り上がるのは「たまに行われる」から

 

(3)「人間そのもの」で商売する情報・サービス業の値下げの限界

情報・サービス業にかかわるクリエーターにとって、「時間」は何より貴重な財産。

情報・サービス業が安売りするのは、この時間を切り売りする行為。

そんなことをすれば、知識や経験を仕入れる時間がなくなってしまう。

もともと「人間そのもの」で商売する情報・サービス業は「自らのキャパシティの限界」がゆえに、値下げで成功することなど不可能。

 

●顧客にとっての価値から価格を考える新しい方法

売価 - 利益 = コスト

これはアメリカで「IT・金融・サービス」という無形のビジネスで
発展した新しいプラシング発想の値決め式です。

はじまりは売価であって、コストではありません。

「顧客はどれくらいの価格なら買ってくれるか」

という、顧客の支払能力・心理・感情をベースにするのがこの式のポイントです。

「あなたが提供する製品、情報、サービスは、顧客を満足させているか?」

「安さを超えた、楽しさや快適さや、共感や、居心地の良さを提供できているか?」

これについて自ら、振り返って確認してみましょう。

もし「大丈夫だ!」と思うなら、自信を持って高い価格を付けましょう。

もし「不安だな・・・」と思うなら、提供する製品やサービスそのものを見直すべきです。

はじめに「高く売る!」と決めて、そこから逆算してビジネスを見直す。

これが「良い値決め」です。

クリエーターさんは

「こちら少ない予算で運営しており、少額しかお出しすることができません」

とオファーを受けたなら、こう切り替えしてください。

「こちら少ない時間で運営しており、高額をいただかないとお伺いできません」

君の成功と幸せを祈る。

<本書で紹介されている値決め方法の概要>

●「まぜプラ」・・・複数の商品やサービスを組み合わせて売る。例:マクドナルドのバリューセット

●キャプティブ(おとり・捕虜)戦略・・・本体を安い価格で売り、あとから儲ける。例:キャノンのコピー機・プリンター

●フリー・プライシング・・・無料と有料を混ぜる。例:ドロップボックス、電子書籍、スマホゲーム、送料無料、家族間通話無料

●O2Oプライシング(オンライン←→オフライン)・・・コンサート→ライブDVDをネット販売

●サプライズ・プライシング・・・「俺の」イタリアンの原価率300%

●「くらプラ」・・・松竹梅の3プライス

●「やわプラ」・・・困りごと・悩み・不安を和らげ、解消することで単価をあげる。例:婚活、育毛剤、下取りセール

ご紹介したピカソのエピソードで、ミケランジェロが同様のことを言っていたことを思い出しました。

単純に目の前のコストに利益を加えて価格を設定する考え方から脱出することで、光が見えてくるかもしれません。

これまで事業を続けてきて培った技術やノウハウを整理し、わかりやすく表現し、自分の仕事にもっと自信を持つこと、さらに高めることも大切ですね。

逆に言うと、値下げというのはとても簡単な方法です。価格を下げればいいだけですから。

安易に値下げを選択せず、頭を絞って、値上げと、それにふさわしい商品・サービス・他にない工夫を考えましょう。

 

【目次】

イントロダクション-安売りをしない安売り、値上げをしない値上げ

第1章 売上重視が、会社を不幸にする犯人だった!

第2章 ドッグ(DOG)ビジネスは「無料」に向かう

第3章 値下げが成功する場合、失敗する場合

第4章 そろそろ「値決めの哲学」を持とうじゃないか!

第5章 顧客満足「高」価格をつくる「まぜプラ」

第6章 顧客に心地よいサプライズをつくる「ここプラ」

第7章 トップセールスに学ぶ、比べさせて売る「くらプラ」

第8章 顧客の困りごと、悩み、不満を和らげて2.5倍売る「やわプラ」

エピローグ

 

【今回の一冊】

◆タイトル:『良い値決め悪い値決め-きちんと儲けるためのプライシング戦略』

◆著者:田中 靖浩

◆出版社:日本経済新聞出版社

◆ページ数:248ページ

◆2015.7.16

アマゾンでレビューを見る

 

【おすすめ度】(5段階) 

●総合 ☆☆☆☆☆

●読みやすさ ☆☆☆☆

 

【関連書籍のレビュー】

『一瞬でキャッシュを生む!価格戦略プロジェクト~小予算で簡単にできる感情価格決定法~』

→顧客感情をベースにした価格決定、値上げ戦略

・価格には品質表示機能

・「どうすれば、○○○円いただいても、自分自身納得できるだろうか?」

 

【関連ブログ】

 

【関連サイト】

 

【編集後記】

普段の買い物から、

「これは私にとっていくらの価値があるだろう?」

と考えることで、価値についての感度が高まります。

おそらく、思った価格より安ければまた買おうと思い、

高ければリピートはせず、別の選択肢を探すのではないでしょうか。

さらに、

「なぜそう思ったのだろう?」

と深堀すると、さらに理解が深まりますね。

【目指せ200冊レビュー!】

今回で198冊目です。

 

【過去の書籍紹介はこちらのブログに書いていました】

中小企業経営に役立つビジネス書・自己啓発書レビュー

【おわりに】

最後までお読みくださりありがとうございました。
今後とも引き続き、当ブログをよろしくお願い
いたします。   

 

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