【コンセプト事例】明太子『ふくや』(カンブリア宮殿まとめ)

バタバタしていてあまりカンブリア宮殿を見られていなかったのですが、ひさびさに見ました。
見たのは、いくつかの書籍でも紹介されていて、注目していた博多の明太子屋さんのふくやさん。
カンブリア宮殿でみても、やはりすばらしい会社でした。
ふくやの創業者、川原俊夫さんは明太子を開発し、全国区の名物にまで育てあげました。
ドラッカー氏の言う『顧客の創造』を見事成し遂げた事例でもあると思います。
コンセプト
誰に:全国の人々に
何を:明太子と明太子商品を
どのように:特許を取らず、教え方を広め、明太子市場を創造して
※当方解釈
→次の経緯でも紹介している通り、オープンな姿勢で明太子市場を創造した点は特筆すべき点だと思います。
明太子が全国区になった経緯(明太子市場の創造)
・川原俊夫 食品卸売業からスタート
・釜山のタラコのキムチ漬け
・1949年 明太子を発売 全く売れなかった
・10年改良 ”明太子”の生みの親
・評判となり、博多の町に広がっていった
・当時は博多で人気の惣菜にすぎなかった
・真似する業者がではじめた頃、特許をとらなかった
・「作り方ば教えちゃるけん みんなで作ればよか」
・一緒に作っている社員が怒った。怒った社員を独立させた。
・製造方法を教え、マーケットが広がった
・自店は2店舗しかなかった。が、他のメーカーがデパートや東京に進出したから明太子が広がった
・作り方を教えなかったら今の売上の10分の1もなかったのではないか
・1975年 東京博多間 新幹線つながる 明太子は絶好のおみやげに
・今では博多の名物に。明太子メーカーは福岡だけで150以上ある
・明太子市場1300億円 巨大な地場産業
・特許をとらなかった俊夫に福岡の人は感謝している
・後発に気兼ねなく市場に参入できる土壌をつくってくれた
→ヒット商品を開発すると、どうしても自分だけの利益にしたい誘惑にかられますが、川原俊夫さんはそうはしなかったという点が偉大です。
この市場創造プロセスはとても参考になると思います。
業績
・明太子メーカートップ 売上149億円 従業員数639人
・30年連続売上No.1
→オープンスタンスで市場を拡大した上でもトップメーカーを維持している点がすごいですね。
元祖とは言わない
・「元祖と書いて、明太子がうまくなるんか」
・「最初に明太子を作ったところが1番じゃないぞ」
・「1番大きいところが1番じゃない」「1番おいしいところがナンバーワン」
・「いろいろな味があっていいじゃないか。」
・味で勝負した。品質で頑張ろう。
→この創業者の発想は肝に銘じておかねばならないと思いました。
品質を追求し続けているからこそ、どこにも追い抜かれないんですね。
新商品開発や飲食店等新業態へのチャレンジも積極的です。
経営理念・方針
・ふくや手帳 社員全員所持。
強い会社・・・利益を出す
良い会社・・・利益を地域のために使う・”貢献”という言葉が嫌。”利益を出して地域に認めてもらう会社になる”。
・利益を出したら「悪い」と日本人は言われる。
「堂々と利益を出せ。」「利益をいいことに使えばいい」「きれいな使い方をしろ」
・税金を一番多く払う 1979年 高額納税者1位
「法人に切り替えた方がいい」「税金が安くなる」
「道路は何でできている。橋は何でできている。税金じゃないか。なぜ多く払ってはいけないんだ。」
一番大切にしていたのは「利益を出して税金を納め、雇用を守ること」
社員に「がんばって利益を出して社会貢献に使おう」だから「利益を出そう」といっている。これだと社員に言いやすい
→税金を一番多く払う。参りました。脱帽です。
税金・社会保険料が高いなと時々思ってしまう自分が恥ずかしくなりました。
大いに反省です。
胸を張って納税しなければですね。
商品・サービスづくり
・ふくやオリジナルの唐辛子 3種類の唐辛子を独自のブレンド タラコ本来の旨味を引き出す
・調味液で2日間 味を熟成
・ツブチューブ → 明太子を調味料として使ってもらう
→調味液の製法は秘伝とのこと。
地域貢献(福岡・博多)
・網の目コミュニケーション室
地域のイベント・スポーツ大会応援・人材を派遣
・平成20年から
・ボランティア活動をするには「商売人じゃないと時間とお金が続かない」
→時間とお金を会社で用意すればサラリーマンでもできる
・2015年度 1億5000万円 7億円の利益の20%
・地域活動の時は残業免除
・勤務時間内のPTA活動は出勤扱い + 地域ボランティア手当
・地域役員活動にボランティア手当を出している
・地域の人が「ふくや」があってよかった。工場があってよかった。
・PTA会長になったらリーダーシップのいい勉強になる
”肩書のない世界”だからこそ意味がある
・川原俊夫さん 戦争で生き残った → それまでは自分の人生 → 戦後は 人の役に立たなければ申し訳ない
サラリーマンだと資金も時間も足りない。だったら自分の力で金と時間を稼げる商売人になろうと
→そういえば、友人も「サラリーマンだとなかなか地元の活動とかに参加できなくて、地域活動をしている人と距離を感じる。」と言っていました。
時間とお金を自分の力でなんとかできるからサラリーマンではなく、商売人にとのこと。
独立した今の自分で考えるとこれも頷けます。時間とお金を地域貢献に活用できるようにするには相応の努力と工夫も必要ですが。
ふくやの今後の展開
・ふくや 食で九州を盛り上げる取り組み
ふくやの営業するスーパー
マジャク(有明産) イソギンチャク(有明産) 大長ナス(熊本) ウチワエビ
九州にある知られざる食材を販売
プロの料理人が顧客。使ってもらうことで広めようとしている
地元の変わったものをメーンとすると地元の人も観光客も喜ぶ
・産地・生産者を育てる ふくやうなぎの養殖事例
九州のおいしいものを集めて広げていく
・ふくやの飲食店
海食べのすゝめ
コンセプト:全国のうまいものを提供すること
博多の人に全国のおいしいものを食べてもらう
食を通じて福岡に貢献する
→食を通じて福岡と九州に貢献する具体的な活動、お見事です。
こういった事業展開は地域活性化の観点でもとても参考になりますね。
メモ
・店内にイートインスペース『明太子お茶漬けセット』
おわりに
大変刺激と元気をいただきました。
川原俊夫さん、本当にすごい人です。
10年かけて完成させた明太子づくりを惜しげもなく人に教えるなんてことは凡人にはできません。
川原俊夫さんという方がおられたから今の明太子があるんですね。
逆に言うと、川原俊夫さんがはじめられるまで、福岡に明太子は存在しなかったということです。
一人の強い意思と忍耐強い努力があれば、名物と呼ばれるものを作ることが可能だということを体現されている稀有な事例だと思いました。
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