いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長

【こんな方にオススメ】(5段階)
●伊那食品工業の経営をもっと知りたい ☆☆☆☆☆
●持続可能な成長を実現したい ☆☆☆☆
●従業員が安心して働ける職場を作りたい ☆☆☆☆

 

【感謝】
読者のみなさまへ
いつもありがとうございます。
昼間はまだ暑かったり、夜は涼しかったりと服装に悩む日々です。

【今回のテーマ】
中小企業経営

【今回の一冊】
◆タイトル:リストラなしの年輪経営
◆著者:塚越 寛
◆出版社:光文社

【レビュー】

●年輪経営とは

私は伊那食品工業が「良い会社」と呼ばれても嬉しくありません。
「いい会社」と呼ばれるようになりたいと思います。
「いい会社」とは、単に経営上の数字が良いというだけでなく、会社をとりまくすべての人々が、日常会話の中で「あの会社は、いい会社だね」と言ってくれるような会社です。
取引先に無理をお願いして自分の会社の利益を上げようとするのでは、「いい会社」とは言えません。
食品偽装のように、消費者を欺いた商売をすることもあり得ません。
社員たちが苦しく嫌な思いを抱えて働いているようでは、いかに給料が高くても駄目なのです。
地域貢献をしないような会社を、地元の人は「いい会社」とは思わないでしょう。
伊那食品工業は1958年の創業以来、2005年までの48年間、ほぼ増収増益を続けてきました。
寒天という地味な商品を、自ら開拓しながら、ジワジワと育ててきた結果です。
増収増益を続けられたことで、自己資本も充実でき、ほぼ無借金経営を実現しています。
いい時も悪い時も無理をせず、低成長を志して、自然体の経営に努めてきました。
私はこの経営のやり方を「年輪経営」と呼んでいます。
木の年輪のように少しずつではありますが、前年より確実に成長していく。
この年輪のような経営こそ、私の理想とするところです。

日本でいちばん大切にしたい会社で紹介されていた伊那食品工業の会長、塚越さんの著書です。
年輪経営の考え方が大変わかりやすく書かれております。

(1)社員が「前より幸せになった」と実感できることが成長

社員が快適さや幸せを感じる度合いがだんだんに高まっていくこと。

これが会社が成長している証なのです。
売上も利益もこの会社の成長の手段に過ぎないと思います。
幸せを感じるには、より給料が増えるとか、より働きがいを感じるとか、より快適な職場で働けるとか、さまざまなことがあるでしょう。
これらの実現と会社永続のバランスを取りながら経営していくべきだと考えています。
歴史家が今の時代を振り返った時、
「平成とはなんて不思議な時代だったんだろう」
と言うに違いありません。
「モノはいっぱい溢れているのに、みんなが幸福じゃなくて、倒産する企業も多く、貧困に苦しんでいる人がたくさんいた。一体、どうなっていたんだろう」
「利益こそすべて」というような、極端に軸を外れてしまった現在の経済界の流れを修正することは容易ではないことは事実でしょう。
しかし今こそ、その流れを修正することが必要ではないでしょうか。
会社が成長するということは、社員が以前より「幸せになった」と感じ取れることだと思います。

その原点に戻れるように、修正する勇気のある会社が一社でも二社でも増えることが大切になってきます。

(2)人件費は会社の目的

私は、人件費はコストとは考えません。
人件費は目的なのです。
例えば、兄弟とか、親しい友人で事業を起こしたものとします。その時に、人件費が少なければ少ないほどいいと思うでしょうか。
そんなことはないはずです。
みんなで一生懸命に働いて、より多くの報酬を得て幸せになることは、事業を起こした目的の一つなのですから。
報酬を減らして、会社の利益を増やしても、事業を起こした意味がありません。
上場企業は別でしょうが、一般の中小企業であれば、使うべきものを使い、払うべきものを払った後で、利益がゼロになっても構いません。
利益を上げようとするならば、まず商品やサービスの付加価値を上げることを考えるべきです。
そして、適正な価格で売れる仕組みをつくることです。

(3)経営戦略は「進歩軸」と「トレンド軸」を見極めて

「進歩軸」とは、人間が過去から現在、そして未来へと進歩していく方向を示すものです。
人間は紆余曲折しながらも、大きな流れとしては「幸せ」や「理想」に近づこうと進歩しています。
世の中が良くなっていこうとする、人間があるべき姿に向かっていこうとする、その時に辿るのが「進歩軸」です。
ですから、「進歩軸」は過去から未来に貫く縦の時間軸になります。
「トレンド軸」は、その時どきの流行を示すものです。
「進歩軸」に垂直に交わるイメージとなります。
商品を開発する場合も、この「進歩軸」と「トレンド軸」を意識することが大切です。
流行は大切ですが、それを追い回しすぎると、振り子が戻った時に痛い目に遭います。
それよりも、「進歩軸」に沿ったような商品をじっくりと育てることを心がけてきました。
人間が幸福になるような方向の商品であれば、いつかは報われるものです。
最近の流行で言えば、「地球環境に優しい商品」があります。

流行りのように見えるので、「トレンド軸」に乗っているように思われますが、根底には「人類の末永い幸福のため」という命題が横たわっており、「進歩軸」に合った商品群と言えます。

●経営とはみんなのパワーを結集するゲーム

私は、経営はいかにしてみんなの結束力を高めるかというゲームだ、と考えています。
スポーツに例えるならば、連携プレーが必要なサッカーのようなものです。
役員も、社員も、パートさんも、さらには取引先の方々も含めて、みんなのパワーを結束させて、
一つの方向に向けさせること
が経営者の努めだと思います。

一人ひとりが分散してしまえば、パワーは弱くなります。
全員が一糸乱れぬ行動をとる時に、会社のパワーが最大に発揮されるわけです。
最近は、効率がいいとかで、在宅勤務を導入する企業が増えているようです。でも、私に言わせると、それは間違いです。
働く人のさまざまな要望もあるでしょうが、会社経営から見たら、パワーを分散していることになるからです。

最近は、伊那食品工業にトヨタグループの会社、ローソン、日本生命、村田製作所、リッツカールトンホテルといった企業も見学に来られるそうです。
これからの時代を生き抜くヒントを年輪経営は示しているのではないでしょうか。

 

【目次と注目ポイント】

はじめに

第一章 「年輪経営」を志せば、会社は永続する
●急成長は敵
●ブームで得た利益は、一時的な預かりものと思え
●人の犠牲の上にたった利益は、利益ではない
●「いい会社」をつくるための10箇条

第二章 「社員が幸せになる」会社づくり
●法人税だけが税金ではない
●年功序列制度で社内の「和」を保つ
●最大の効率化は幸せ感が生むモチベーション
●安いからといって、仕入先を変えない
●身の丈に合わない商売はしない
●たくさん売るより、きちんと売る
●性善説に基づくと経営コストは安くなる
●マーケット・リサーチで「いい商品」は生み出せない
●安い労働力を目当てにした海外進出はしない

第三章 今できる小さなことから始める
●掃除はもの言わぬ営業マン
●小さな楽しみをつくって、社員のやる気をアップさせる
●社員旅行が楽しい会社は結束力がある
●社員の健康を守るための投資は惜しまない

第四章 経営者は教育者でなければならない
●幸せになりたかったら、人から感謝されることをやる
●「立派」とは、人に迷惑をかけないこと
●採用で最も重視するのは「協調力」
●「コンプライアンス」という言葉は大嫌い
●企業価値を測る物差しは「社員の幸せ度」
おわりに

 

【今回の一冊】
◆タイトル:リストラなしの年輪経営
◆著者:塚越 寛
◆出版社:光文社
◆ページ数:189


【おすすめ度】(5段階)
●総合 ☆☆☆☆☆
●読みやすさ ☆☆☆☆☆

【関連書籍のレビュー】
『日本でいちばん大切にしたい会社』
→伊那食品工業も掲載されています

『日本でいちばん大切にしたい会社2』
→すばらしい中小企業が紹介されています。

『いい会社をつくりましょう』
→こちらも塚越さんの著書です。※タイトルは経営理念

 

【編集後記】
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
実は私の”リストラなしの「年輪経営」”は塚越氏の直筆サイン入りです。

生で講演を聴いたあとで本書を購入し、サインをしていただきました。
実際のお話もすばらしかったですが、本書からも塚越さんの思いが十分に伝わってきます。

 

【目指せ100冊レビュー!】
今回で64冊目です。

丹波経営研究会